宿題日和
夜神月「ねーライトー……」
何度目かわからない呼びかけ。
「遊びに行くのは数学終わってからな」
そして、何度目かわからない同じ返事。
夏休みだというのに、今日も今日とて勉強会。
この夏は、まだライトの部屋から出ていない。
だって、できないものはできないんだもん。
こんなのやってたら一生遊びに出かけられないって。
恨めしくてにらんでやったけど、ライトはまったく気にせず本のページをめくっている。
仕方なくノートに視線を落とすが、やっぱり解けない。
……数学なんて大ッ嫌いだ。
「」
不意にライトが立ち上がる。
「ちょっと本屋に行ってくる。ちゃんと進めておけよ」
「ん、わかった」
暇を持て余したのか、ライトは出掛けてしまった。
自分だけずるい。
そりゃあ、ライトはとっくに宿題終えてるけどさ。
「……あ」
そこで、妙案が浮かんだ。
(……答え見ちゃえ)
鬼の居ぬ間になんとかってヤツだ。
これさえ終わらせれば、どこかに連れて行ってくれるはず!
書き写すだけでも結構大変だけど、解くよりは100倍マシだ。
1時間ほどして、ライトが帰ってきた。
「ただいま。どうだ、調子は」
「えっと……一応終わったよ」
「そうか、見せて」
ちょっとドキドキしながらも、ノートを手渡す。
ライトはパラパラとページをめくり、ときどき手を止めてはじっと見つめる。
一通り目を通したあと、ノートを閉じて私に向き直った。
「答え、写しただろ?」
サーッ……、と血がおりるのがわかる。
なんでわかったの……? バレないように所々間違えてるのに……。
「なんでわかるの、って顔だね。ここ、これを間違えててこれが正解なのはおかしい」
ライト…探偵にでもなれるんじゃないの?
「やり直し」
そう言って、ノートを突き返す。
「えぇ~」
「"せっかく早く終わらせたのに"って? ちゃんとやらないと意味ないだろ?」
「でもぉ……」
それはわかってるけど。
やっぱりやりたくない私は、精一杯抵抗してみる。
すると、ライトはノートを持つ手を下ろし、溜め息まじりに言う。
「素直にもう一回やるか、写した罰を受けるか、どっちにする?」
ドキッと心臓が跳ね上がる。
これはまずい…………?
「だって…やってもわかんないんだもん……」
このままではヤバいことはわかっているのに、言い訳しか出来ない。
バサッとライトがノートを机に置き、あきれたように言った。
「……そんなに叩かれたいのか。まぁいいよ、どっちにしてもお仕置きはするつもりだったからね」
ライトは私の手を引いてベッドに腰掛ける。
「やっ……やだ……」
引っ張られる手に力を込め、近づかないよう警戒する。
しかし、そんな態度をライトが許すはずがない。
「……今日のは一段と悪い子だな。この様子じゃ、手だけでは済まないかもしれないね」
「っ……やっ…」
その言葉に一瞬ひるんだ私をライトは見逃さなかった。
抵抗する間もなく膝の上に乗せられてしまう。
「さて」
絶対的不利な状況で、上からライトの声が降ってくる。
「まずは自分の罪の確認からいこうか」
固まる私のスカートをめくり、いつでも準備OKと言わんばかりに下着を纏ったお尻に手を当てている。
「はどんな悪いことをしたのかな?」
わざとらしく質問を投げかける。
よく考えたら、怒られるようなことをいくつもしている気がする。
……何も、言えない。
パンッ!
「ひゃっ……!」
下着の上から、一打目が振り下ろされた。
パンッ!パンッ!パンッ!
「やっ…痛いっ……痛いっ……!」
続けて打ちながら、ライトが再び口を開いた。
「まず、答えを写したね」
パンッ!
「あっ……」
「それを僕に隠して、誤魔化そうとした」
パンッ!
「ぁうっ……」
「やり直しにも応じない」
パンッ!
「あぁっ……」
「挙句の果てに、お仕置きも素直に受けられない」
パンッ!
「やっ・・・」
「どれくらい叩かれたらいい子になれるだろうね?」
矢継ぎ早に責められ、叩かれ、冷静に考えることが出来ない。
「、ごめんなさいは?」
パンッ!
そう言いながらも、私がごめんなさいをするなんてライトは思っていないだろう。
わかっていて言わせようとしているのがくやしくて、ますます言えなくなる。
> 「いっ…たぁ……ぃ……もうやだぁ…」
パンッ!パンッ!
謝る様子のない私を見下ろして叩き続けていたライトだが、しばらくして手を止めた。
と思ったが違った。
その手は下着にかかる。
「やだっ…やっ…だめっ……下ろさないでっ!」
右手を後ろに伸ばして下着を押さえようとするが、あっさりと阻まれてしまう。
「こうしないとは反省できないからね」
するっと太ももまで下げられて、お尻があらわになる。
「やっ……いやぁ……」
バチンッ!
「あぅっ……」
小気味良い音が鳴り、初めは衝撃が、あとから痛みがやってくる。
思わず情けない声が出て、ライトの思うままになっているようで癪だ。
「痛いっ!」
文句をつけるように横目でキッと睨むと、その態度を咎めるように叩かれる。
パァン!
「ひぅっ……」
何度も何度も連続で打たれているせいで、回を増すごとに一打一打の痛みが強くなる。
お尻が熱を帯びると共に、涙がにじんできた。
やっぱり、ちゃんとごめんなさいを言えばよかったかも。
だって、裸のお尻を叩かれるのってすんごく痛い。
そうなるまで思い出せない自分が憎くなる。
「、悪いのは誰?」
「…っ…………」
「僕かな?」
「ぅあっ…………」
ぶんぶんと首を横に振る。
痛さで思わず目をつぶると、涙がこぼれ落ちた。
「じゃあ、誰だろうね」
「…うっ……く…」
パァン!
「ひゃぁっ……あっ…、あたしっ……」
「悪いことをしたら何て言うんだ?」
「…………っ…」
さっき決心したばかりなのに、やっぱり言えない。
バチンッ!!
「あぁっ……!」
「もっと痛くされないとわからない?」
バチンッ!!バチンッ!!
「ひっ……ごっ…、めんなさぁ…っ……ごめんなさいっ……」
すでに腫れているお尻を今まで以上の強さで叩かれて、ようやく謝罪の言葉が出てきた。
ライトは軽く溜め息をついて、顔を近づけて尋ねる。
「反省した?」
「っく、…した……反省、したっ…」
「ちゃんと宿題できるな?」
「…っ……ちゃんと……する…」
ライトはそこまで聞くと、頭を撫でてくれた。
「よし、いい子だ」
たまらずライトに抱きつこうとするが、ちょっと待って、と止められてしまう。
拒まれたように感じてきょとんとしていると、涙に濡れた目元を指でふき取ってくれた。
「すぐ戻ってくるから」
そう言って部屋を出て行く。
わけがわからなくて、お尻をしまうのも忘れてドアを見つめてると本当にすぐ戻ってきた。
そして、手に持っている袋を差し出された。
「アイス、食べるだろ?」
それはこの家と本屋の間にある、コンビニの袋。
「……うん!」
……自分でも、単純だと思う。
「あ、でも……」
「どうした?」
「痛くて、座れない……」
「ここで食べるのはどう?」
ライトが、再びベッドに腰掛けて片手を広げた。
……なるほど。
「早く宿題終わらせて遊びに行こう。わからなかったら教えてあげるよ」
「……スペースランドがいい」
「はいはい」
私は足を軽く広げたライトに向かい合ってまたがり、頭を撫でられながらアイスを頬張るのだった。
<あとがき>
私は肝心のスパシーンが結構薄くなってしまう傾向にあるので引き延ばそうとしたら、ダラダラしただけでした。
ホントはさまにもうちょっとゴネてもらってたんですが、あまりにとりとめがなくなったのでそれはまたの機会に。
しかもネタが時期外れになっちゃったし。書き始めたのは8月だったんです……
最後は無駄に甘くしてみました。やっぱりお仕置きのあとはこうでなくっちゃ!なんて。
08.09.16