締切厳守!

幸村精市・仁王雅治(分岐)

デフォルト名:寺本 美緒



「今日は26日ですね。では明日、予告した通り学年英単語小テストですので、よく勉強してきてください」
 放課後のホームルームで担任の連絡事項を聞く。
 英単語テストなんてめんどくさいなぁ、とか考えながら。

 考えながら。
 今日は26日……?
 いやな予感がしてスケジュール帳をバッと開く。
 そしてすぐにうなだれる。
(25日申込締め切り……)
 精市にマネージャーの仕事として頼まれていた、新製品のボールの予約注文を完全に忘れていた。
 ギリギリまで動かない悪い癖が仇となった。
 締め切りを過ぎてしまった、なんてこと精市に言えない。
 確か受注生産とかで、予約しないと手に入らないものだったような気がする。

 早くパソコンで確認したくて、部室まで飛んで行った。
 起動を待つ間も落ち着いていられない。
 ページを開くと、何度見ても締め切りは25日。
 そして「受注は締め切りました」の文字。
 冷や汗を流しながらどうしようもなく画面を眺める。
 こんなこと精市に知れたらどうなることか……。
 
「まーたやらかしたんか
 突然の声に心臓が止まるかと思うほど驚く。
 振り向くとそこには仁王がいた。
 ……また仁王にバレた…………。
 軽く眩暈がして頭を抱える。
 あまりに焦っていたせいで、ドアを開けたままパソコンに向かっていたのだ。
 そのせいで人が入ったのにも気付かなかったらしい。
 こんな詰めの甘さだから締め切りだって忘れるんだよ私は。
 仁王に大体のことを把握されてしまったようだ。
 よく思い出してみたら、この件を精市に頼まれた時、その場に仁王もいた気がする。
「……前のテストのとき、本当に告げ口してないんでしょうね」
 若干話をはぐらかしつつ仁王に言う。
 先日見られた3点のテストは精市に知られてしまった。
 未だに仁王がそれとなくバラしたんじゃないかという疑いは晴れない。
「あれはお前さんがしくじったんじゃろ」
 ……うん、まぁそうですけど。
 でも、知ってたんだからもっと上手く立ち回ってくれたって……。
 いやわかってますとも。
 テストなんていつか返ってくるのはわかってるんだから、どうあがいてもそのうちバレてたでしょうよ。
「まぁいいや、絶対黙っててよ!」
 念のため口止めはしっかりしておく。
「俺が黙ってたところでどうにかなるもんでもないじゃろうに」
「それでも駄目!」
 力強く仁王に指差してパソコンに向き直る。
「随分な態度じゃのう。自分の立場わかっとるんか?」
 目の前の文字と同程度に絶望的な台詞が聞こえてきた。
 まずい、と思って少し振り向く。
 すっかり油断していたが、仁王の機嫌を損ねてもいいことはない。
「俺が黙っとる保証はないがのう」
 ほらもう臨戦態勢だ。
「なっ……、内緒にして……ください……」
 これは下手に出るしかない。
 肩をすくませて見上げる私に構わず、仁王は意地悪な笑みで思案している。
 いつもならからかう様子を見せながらも了承してくれるのに。

 さらに仁王は私を追いつめる発言をかます。
「俺が代わりにお仕置きしてやろうか」
 こいつとんでもないことを言いだした。
 今、私は少々混乱しています。
 まず第一に。
「しっ……知ってるの? あの、なんで……」
 部員なら精市に怒られてるってことくらいはわかってるんだろうけど、具体的なことまでは知らないはず……。
「まぁ企業秘密、と言っておこうかの」
 カーッと顔が熱くなる。
 仁王にお仕置きのことを知られてたなんて大恥だ。
 しかもそれどころか、代わりにお仕置きだなんて、何考えてんのよ!?
「仁王、どういうつもり……」
「幸村にお仕置きされるか、今お仕置きされるか、選びんしゃい」
「はぁっ?」
「今お仕置きを選ぶなら、ボールの件はなんとかしてやってもええが」
「なんとかって……」

 もう溜息が出る。
 そんなのどっちを選んだって変わらないじゃない。


 さぁ、どうしよう……。



A:仁王にお願いする

B:自分で幸村に白状する!

C:そうこうしている間に幸村が部室に……